Willcom D4が発表された時、この不思議なデバイスに私は何の関心もなかった。そもそもWindows系のOSは仕事では使うが、自分で自由に使うOSとしてはちょっと不満がある。発表された直後、あまりの不評が掲示板などに書き込まれるのを見て初めて関心を持ったのであるから、私もかなりの天邪鬼である。
不評を知って購入した以上、そのデバイスにあまり文句をつけるつもりはない。むしろこうしたデバイスを開発し売ろうと考えたWillcomとSharpの勇気は讃えたいと思う。このデバイスは私が「こういうものがあったらいいのにな。」と漠然と考えていたいろいろな機能を提供してくれたと思っている。
何よりも電車の中で取り出すのに抵抗感が小さい。10年以上前から電車の中でノートPCで仕事をすることは当たり前のようにやっては来たが、やはり鞄からPCを取り出す時にはいつも抵抗感があった。そういえば、先日電車の中でUMPCを出して使っている方がおられたが、Willcom D4を見慣れてしまうとずいぶん大きなデバイスで違和感を感じてしまったものである。
さらに言えば遅いといわれるVistaを充分チューニングしたのだろう。私が使っているノートPCなどより軽快に動作する。開発陣の様々な努力がしのばれる。
技術の上での最大の問題点は、おそらく何らかの政治的な理由があったと思われるが、標準バッテリーにあったと思われる。普通に使っていれば30分程度しか持たず、スイッチを切ってもどんどん電池が消耗してしまう。これを欠陥商品と断じたユーザたちがまず騒ぎ出したのである。そこに加えて無線LANがつながらない、ダイヤルアップ通信が不安定、bluetoothもだめ、ワンセグもつながらない、キーロック機能も使えないなど様々な欠陥が加わってユーザのストレスが半端なものではなくなったと思われる。
拡張バッテリを無償でつけるキャンペーンを続けただけでなく、2ヶ月後にはあっさり拡張バッテリタイプのモデルが出たことから考えてもこれは失敗だったはずだ。私も最初のうちは使えないデバイスだと感じたが、拡張バッテリを装着してからは、様々な欠点が当初に比べてはるかに小さな問題になってしまったと感じている。
しかし、一方でこうした初期の不評に対して、企業側がひたすら沈黙を守りつづけた対応にはやはり不満が残る。色々な苦しい事情があったに違いないのだと想像するが、結局のところ一昔前の古い企業体質を見せつけられたようでがっかりしてしまった。口うるさいユーザは大事な顧客だと最近は言われるような時代にこれはなかろうと感じたのは私だけではなかったはずだ。
せっかくのおもしろいデバイスなのに、ユーザとメーカの間になんとなくしこりを残し、今後の途がこうしたこと閉ざされていってしまうことを懸念している。過去にそうした例はたくさんある。残念なことである.