Seishi Ono's blog

Fugaces labuntur anni. 歳月人を待たず

読書の時間

長いこと家と職場の間を往復するだけの生活をしていると、色々な感覚が鈍磨してゆくような気がする。以前はそれでも電車の行き帰りには読書を楽しんでいたものだが、今はそれもない。スマートフォンをいじっていればやがてに自宅に着いてしまう。

出版社に勤めている友人がもう20年も前から出版は駄目だと嘆いていて、その原因は日常生活の娯楽があまりに多様化してしまって本などに目がゆかなくなってしまったからであると説明していた。それは当然のことで、一日は24時間しかないのだから、その間にできることは限られている。ゲームがあり携帯電話がありインターネットがあればそれだけで一日は終わってしまう。

とはいえ、私は毎週アマゾンや古書サイトからなにがしかの買い物をしている。その中には、結局積んでおくだけになるのだが、時々手にとって眺めるだけで満足という本もあるのである。多少なりとも本好きならそういう習慣は持っているだろう。

それにしても、私の読書量はとても少なくなってしまった。今日は訳あって朝は1時間ほど列車に乗って出勤だったのであるが、その間にお気に入りのゲーデルの不完全性定理を少し読んだ。しかしながら実は、道中の半分以上の時間はブラックベリーと戯れていたように思う。出版社の友人の嘆きを思い出さないわけにはゆかない。

こうした時代の読書は、かつての、といってもほんの10年か20年前の読書のあり方とは大きく異なっている。今日的な読書では、だれも本を深く読もうとしないし、長い時間をかけて読もうともしないというようにも見えるかもしれない。しかし、そうとばかりもいえない部分もある。たとえば、私は読書の量は減ったがお気に入りの本を長い間持ち歩いて少しづつ楽しみながら読むという読書もする。

新しい時代の新しい読書のあり方というものもあるのかもしれない、とふと思う。積ん読とちびちび読み…自分のスタイルに合わせた虫の良い話に過ぎないのかもしれないが。

ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)